「澪ちゃん? どうしたの?」 「あ……いえ」 戸惑いの色を隠せない俺を、おばさんは心配そうに覗きこむ。 蝉が鳴く、暑い外。 額にじわりと汗が滲むのに……背筋は驚くほど寒くて。 ドクンドクンという心音が、頭の中に重く響く。 ─────ある夏の日に アヤノは愛しい母親に捨てられた。