「いわゆる"植物状態"になる可能性が高いでしょう」





「……え」








自分の娘を俺に任せて去っていくあの人の背中を、俺は引き留めることができなかった。




そんな後悔をだらだらとする暇もなく、病室で伝えられた医師の言葉。







「恐らく頭を強くぶつけたせいで脳に激しい衝撃を受けたのでしょう。今は重度の昏睡状態に陥っています」




「ア、アヤノは……もう目を覚まさないんですか?」




「いえ"ひとつの可能性として"の話です。もしかすると、昏睡状態ののち速やかな回復に繋がるケースもありますが……今の状態だと……」







カルテを見ながら、医師は言いにくそうに口ごもる。




俺は何も言えず、ただ忙しなく動きまわる彼の持つボールペンを眺めた。