「あ、マグロがある」 「こら。それは俺が頼んだやつ。この前キキが食べちゃったから」 「根に持たれてる」 「当たり前」 「あぁ……」 段ボールの中から好物のマグロを発見したのに、それはいとも簡単に澪の手によって回収された。 食べたかった……マグロ。 「なんだ。キキはマグロが好きなのか?」 シュンと落ち込んでいると、知景がそう言って私の顔を覗きこんだ。 「うん、好き」 そう呟いて頷くと、「じゃあ、来週はキキのぶんも買ってこなくちゃな」と優しくあやしてくれた。