しかし、キキを飼い始めて数ヵ月。
アヤノの話によると、彼女の母親はしっかりとその仔猫の面倒をみていたのだというのだ。
仕事の行きと帰りには、ちゃんと餌をあげていた。
トイレのしつけも、アヤノが手を貸すことなくできたし。
いつの間にか"キキ"と呼ばれていたその仔猫を、愛しく抱いては可愛がっているのだと。
「良かったね、キキ」
彼女は今にも泣きそうな顔をしながら、精一杯の笑顔でそう言うのだ。
俺は胸が痛くなった。
喉の奥で、出かかる大きな言葉の塊を。
必死に飲み込んだ。
だって、彼女は"同情"を嫌うから。


