ノスタルジア







フリフリのレースがあるわけでも、華やかな柄があるわけでもなく。




だけど、素直に綺麗で素敵だと思えるそのワンピースを。




彼は私に着ろというのだ。




いつも私がこの家で着ているのは、おそらく澪のものであろうぶかぶかのスウェットやラフな格好のものばかり。





こんなオシャレな服、テレビで女の子達が着てるのを見たことくらいしかなかった。







「私が着てもいいの?」



「あぁ、いいよ」



「これは澪の?」



「僕がこんなの着てたらどう思う?」



「…………」



「ほら見ろ。さっさと着替える」






ポンポンと頭を撫で付けられて、寝室から出ていく彼。




なぜかは分からないが、不意打ちの嬉しい出来事にニヤニヤが止まらなかった。