【短】ハロウィン*マジック

「ん」



美春が掌を上にして、手を差し出してきた。



「な…なに?」



「Trick and Treat」



「………」



お菓子を寄越せってこと?



「俺のは?」



鞄を探って、綺麗にラッピングしたクッキーを取り出す。

実はハロウィンのために手作りでクッキーを作ったんだけど、これだけしか成功しなかった(だから他は買った飴ちゃん)。



「………ん」



そして、ぷいっと横を向きながら美春に手渡す。



「……初めて作ったから…美味しくないかも」



「――手作り?マジで?……サンキュ」



期待してなかったのだろう、一瞬キョトンとした美春だったけど、笑みを深くして笑ってくれた。


リボンをほどいて、クッキーを頬張る美春。

もぐもぐ動く美春の口元を、ついつい気になって見てしまったりして。


口に合わなかったらどうしようという不安で心臓が嫌なドキドキが止まらなかった。