放課後ラプソディ

「坂井さんは書かないの?」

 さっきから気になっていたが、そろそろ言うか。

「あのさあ、ちょっと笑ったまま話すのやめようよ。ヤなやつー」

 友人は顔がほんの少し笑っている。

「そろそろ次のスターが出てこないと、廃(すた)れる一方だよ。実際、いまではごく一部の好きな人だけが読んで、書いてっていう、どうようもない状況だし。でもユーザーの、だから書いてる人たちがそれにたいして気づいてないっていうか、危機感持ってないっていうか……」

「熱いね」

「そりゃあ熱くもなるよ。だって、本出すのが私の夢だから」

 結局、いまだにかないそうにない夢を捨てきれずに、いまに至ってしまった。自分でも「どうなのよ?」と自分に対して疑問に思うときもある。

 坂井綾花というペンネームで、自分の書いた文章が本になり、それが本屋さんに置かれたら。それがいつしか夢になった。なったけど、それで、なにかできましたか? と問われると、これが情けないし自己嫌悪になるのだが、ないのだ。なにも。せいぜい、魔法のiらんどと野いちごという、スターツ出版の運営する小説サイトに文書を載せている程度。

 夢だから、と言ったけど、昔よりいまは気持ちが薄らいでいる。