当時は、ケータイ小説は自分の経験をもとに書いた、エッセイ風味のものがケータイ小説だと思われていた。そこに作者の体験が混ざっていた。
だからさ、私の書いた主人公が、必ずしもそのまま私の気持ちってわけじゃないんだから。ま

 あ、私の書いたものがよくなかった、というのもあるんだよな。タイトルが「傷跡に包帯」だし。内容だって、精神的にちょっと病んでいる女の子と、その女の子の友達みたいな男の子が主人公で、話のなかでまったく出てこなかった桜がストーリーの最後に出てきて、二人で桜を見上げて、というシーンで終わる。

 たいした思い入れもない。すぐにその話は消してしまった。

 でも、私に残ったのは、自分の書いたものを読んでくれた人がいて、感想を書いてくれる人もいる、という事実だった。

 しょせん、素人の書いたものだ、たかがしれている。私の書いたものなんて、ほんの少ししか読まれないよな、と思っていた。

 それが、わざわざ時間を使って読んだ人がいる、それ自体がまず嬉しかった。