放課後ラプソディ

　すると星野は、どこか遠くを見て、誰も出てこない校舎の玄関に目線を送ると、

「んー、あのねー、あんまり人に言うことじゃないんだろうけど、今日家に帰る気がしないんだよね」
　と、元気のない声で言った。

　なんだ、家族と喧嘩でもしたのか。そうだな。僕なら帰らないけど。

「じゃあ、家出でもしたら」

「家出？」

「別にいいんじゃないの。わざわざ帰りませんって言うこともないし。帰りたくなったらすぐ帰ればいいし。もうすぐ夏休みだし、いま友達といっしょ、って言えばだいたいどうにかなるよ」

　てきとうに思いついたままを口にしていた。

「ふーん」

　星野もたいして真剣に聞いてない。

　もし星野が家出なんてしたら、先生、びっくりするだろうな。で、クラスの女子は好き勝手に噂を流すだろう。