放課後ラプソディ

「なんか、顔赤くなってない?」

 やっぱり腫れたんだな。とっさに、この場から立ち去るのがいいと思ったからなにもしなかったけど、ただ見たってだけで殴られたのってやっぱりむかつくよな。

 顔に出たのだろう、星野さんは僕を少し不安そうな表情で見ていた。

「誰か待ってんの? もうみんな帰ってるよ」

 と、話しかけたが、なぜか返事がない。

 教室に星野の友達、いなかった。じゃあ誰を待ってるんだ?

 ちょっと待てよ、星野の友達って誰だ。

 たまにクラスの女子と話すことはあるだろう。でも、しょっちゅう誰かと行動をともにしている星野を見たことがない。いくらなんでも、もう高校生だし、中学生のときの女子グループみたいに、女子トイレまでいっしょに、なんて女子もいるにはいるが、星野はそこまでべったりしていない。

 女子ならではの友情は男である僕には理解しがたい。ただ、女子が一人でいるのって、実はけっこう、異端なんじゃないか。

 異端って。なんだよ、ジャンヌ・ダルクかよ。

「帰らないの?」