放課後ラプソディ

 壁をすり抜け、気がつくと病院の廊下だった。

 戻ってきたんだ。

「あ、いた。歩くの遅いよ」

 霧恵があたしに言う。え、どういうこと?

 んー、もしかして、あたし以外ここからいなくなったことに気がついてない……ってやつ?

 だったらこれは、なにも言わないでおくべきだな。

 よくあることだ。自分の認識が人とずれていて、それに気づかない。天然ともいう。ただし、この場合、言わないほうがいろいろと都合がいいというか、大人の事情っていうか。


――


 できることなら、誰にも会わないで、一人で帰りたかった。

 が、
「芹沢くん」
 校舎を出たら、まるで待ち合わせでもしていたかのように星野がいた。

 誰か待っているのか。ここにいて、玄関から出てくる友達を待っている人はよくいる。

 なぜか顔を見ているような気が。さっき殴られたし、腫れたのか。冷やしてもいないから、少し赤くなっているのかもしれない。