放課後ラプソディ

 桜花院高校を出て、最寄り駅に入り、運賃表の下であたしたちは立ち止まった。ちょうど、帰宅ラッシュで、高校生らしき制服姿の10代もたくさんいる。

 六坂の言った大学病院ってどこにあるのか。場所によっては、電車賃足りなくて行けないかも……。

 ここであたしだけ帰るのって、どうなのよ。読者にとっても、あたしがいなくなると、あとのことは第三人称で二人にどうにかしてもらわないと。

「え、けっこう近くだね」

 霧恵の一言で、光がさしたかと思った。

「あのさー、うちのことだし、おまえらもう帰っても」

「やだ。行くって言ったし。いいよね? 行けるよね?」

 六坂に有無を言わせず、さえぎると、霧恵はあたしに確認をとった。

 当然、とうなずく。

 二対一になり、あたしたちが帰らないとわかった六坂は、「しょうがねーな」と少し面倒くさそうな顔をした。

 幸い、ここからそんなに遠くないし、往復の電車賃は家に帰れる程度の金額だったので、あたしも二人と大学病院に行けた。

 駅で、二人とも話をしなくて、あたしもなにを言えばいいのか、そもそも話せるような雰囲気でもなかったので、黙っていた。