放課後ラプソディ

「別に殴ったってなんにも変わらないよ。こっちが痛い思いするだけ。私、六坂がそういうことするやつじゃないってわかってるしね。仮に殴ったとしても、警察にも言わない、学校にも言わない。その代わり、六坂は後悔するでしょうね」

「うるせーな……」

 六坂の声は小さい。でも、わからない。キレるの、やめてよ。霧恵を殴るのだけは、見たくない。絶対見たくない。

「言いなさいよ、病院。六坂が嫌でも、強引についていくから」

「平気だよ……、しつっこいな」

 うんざりした顔で六坂が突き放したら、
「平気じゃない! この嘘つき!」

 ええ? 霧恵までどうしちゃったのよ。六坂のさっきの声と同じぐらいだったよ。
「ねえ、ちょっと」

 あたしも、気がつくと言葉が出ていた。

「まずは病院。それに、これ以上二人してケンカするの見たくないよ。ね?」

 なぜか、あたしはこの二人のつくりあげてしまったキレ気味の空気に対し、冷静なままでいられた。