放課後ラプソディ

「バカじゃないの……」

「ちょっと」

 思わず、あたしは霧恵に言ってしまった。バカなんて、いま、六坂に言うべきじゃないよ。

「まずは病院に行きなよ! 芹沢は関係な」

「うるっせえな!」

 大声で、いままで聞いたことのない低くてキレた六坂の声が、教室に響きわたった。

 勢いよく、霧恵に向かって六坂が進んでいく。

 やだ、嘘でしょ、やめて!

「なによ。冷静さのかけらもないね。いま私を殴るの?」

 わかっていて、なんでいらだたせるような言い方するのよ。

 六坂は黙ったまま、急に霧恵に近づくのをやめた。それでも、爆発しそうな感情が渦巻いているのか、表情がこわばっていて、目つきが鋭い。

 二人は、3メートルほど離れている。

 あの怖い顔を、真正面からよく見ていられるよな。あたしだったら、顔そむけるよ。