放課後ラプソディ

 心に血を流した人だけが、見える世界があるらしい。

 あいつは僕より流しただろう。僕もきっと、流れている。悔しいのは、同じクラスだったみんなのなかに、はたして何人、あいつの無言の痛みに気がついて、心に血を流したのか。見えるものならのぞいてやりたい。誰が冷たくて、誰がなんとも思わなかったか、確かめてみたかった。あのクラスメート、先生、その他大勢も。

 ミサイルつながりで、教室の天井だけがぽっかりあいて、壁には亀裂が入り、戦闘に巻きこまれて破壊されたような教室を妄想していた。自分でも引くほど、すげーリアルに浮かぶ。

 ははっ、パソコンでイラストでも描きたい。


――


「あーあ。芹沢がチクったら、俺停学かな」

 ひどく投げやりに吐き捨てた。

 六坂らしくない、暴力なんて。