放課後ラプソディ

 顔の左が、激痛だ。

 近くにあった机に、右のわき腹が少しぶつかった。殴られたついでによろけて、かろうじてそこに手をついた。

 そうか、僕の視線が、気にさわったんだな。

 つばを飲みこんでみた。左の頬の痛みは、消えない。

 もういい。すげーもう、どうでもいい。いろんなものが、どうでもいい。いま僕に向かってミサイル落ちても、撃ったやつ恨まないわ。

「なにやってんのよ!」

 中村の悲鳴みたいな声を背に、僕は痛みに耐えながら教室のドアを開け、さっさと帰った。


 まただ。

 銀色のドア。あいつの無表情。黒いピアノ。二段に分かれた上下に動く黒板。薄茶色の床。なにより思いだしたくない、あの音楽室の、クラス全員のそらぞらしい空気。あいつに向けられた視線。