休み時間が終わりだと告げるチャイムが流れ、音楽の先生が来た。
その先生は、顔がゴリラみたいなおばさんなのに、シャネルのマークの金のイヤリングをつけていたので、僕は心のなかで「シャネルの無駄使い」だの、「ゴリラによるココへの冒とく」だの、さんざんこきおろしていた。
授業が始まったが、そいつはまだ来ない。いま、ボッコボコにされている真っ最中なのかもしれない。
事情を知らない先生は「○○くん来てないの?」と、サボりだと思ってイラッとしたのか、不満げな様子でピアノと黒板のあいだに座っていた。
誰も助け船なんか出さなかった。
10分ほどして、ガチャっと音がして、そいつは音楽室の、銀色の重いドアをゆっくりとあけ、何事もなかったかのように無表情で入って来た。
なにも言わなかった。なんで遅れたのか、理由のひとつぐらい先生に言ってもよかったのに、あいつはそれをしなかった。
あいつが不良といっしょにいるところは、卒業するまで、何回か見かけたことがある。
はたして、あいつの事情を知っていたのは、僕だけだろうか? 答えのない疑問がまだくすぶっている。
その先生は、顔がゴリラみたいなおばさんなのに、シャネルのマークの金のイヤリングをつけていたので、僕は心のなかで「シャネルの無駄使い」だの、「ゴリラによるココへの冒とく」だの、さんざんこきおろしていた。
授業が始まったが、そいつはまだ来ない。いま、ボッコボコにされている真っ最中なのかもしれない。
事情を知らない先生は「○○くん来てないの?」と、サボりだと思ってイラッとしたのか、不満げな様子でピアノと黒板のあいだに座っていた。
誰も助け船なんか出さなかった。
10分ほどして、ガチャっと音がして、そいつは音楽室の、銀色の重いドアをゆっくりとあけ、何事もなかったかのように無表情で入って来た。
なにも言わなかった。なんで遅れたのか、理由のひとつぐらい先生に言ってもよかったのに、あいつはそれをしなかった。
あいつが不良といっしょにいるところは、卒業するまで、何回か見かけたことがある。
はたして、あいつの事情を知っていたのは、僕だけだろうか? 答えのない疑問がまだくすぶっている。



