「どうしたの?」

 霧恵がたずねると、六坂の表情が無になっていた。

「いま、電話で……」

 その先が出てこない。声もいつもより小さいし。変だ。

 あたしも霧恵もわからず、六坂の言葉の続きを待った。

「……その、姉ちゃんが……、じ」

 動揺している。言葉が口から出てこなくて、つっかえているみたいだった。六坂、どうしちゃったの?

「なに? どうしたのよ」

「……姉ちゃんが、自殺しようとして、……病院に運ばれたって」

 六坂と、あたしと、霧恵のまわりだけ、音が消えたような気がした。

 教室から人がいなくなっていく。