それとも。ああ、もしかして、主人公だからなにか起きてしまうのか。作者による、なんらかの運命の始まりなのか。

 スマホの呼び出し音が。六坂だ。電話に出て、誰かと話し始めた。

 なんなの、このざわざわした感じ。理由がないし、よくわからないし。なんとも言いがたい気持ち。胸のあたりで、透明な液体か、もしくは透明な気体のようなものがうごめいているような。それが全身に影響を与えている。特に、脳に。
やだな、不安になってきた。気にしすぎだよ。

「うん、ああ。……えっ!」
 と、いきなり六坂は無言になり、体がぴたっと停止した。

 クラスメートはそんな六坂を置いてどんどん教室から出ていっている。