放課後ラプソディ

 わたしは、さっきまでハックルベリーについて考えていて、もしそれを友達に話したら、それが原因でなんかおかしなこと言われなきゃいいなって思った。

 不意に田中さんの笑い声が聞こえてきた。ヨモギとの会話に意識が集中していて、田中さんがなんで笑ったのかわからない。

田中「そっかー、もう夏休み」

松原「夏休みの宿題ってなんだった?」

 友達でも本当のことは言いづらい。


――

「自分の教科書ぐらい、自分で運べよ。媚び女が」
 霧恵がお怒りだ。

 媚び女(こびおんな)。言われたくない言葉だ。面と向かっても、影でも。

 音楽室から教室に戻る途中で、篠原さんが、持っていた教科書やらノートやらペンケースやらを、階段で派手に落っことしてしまい、そのときたまたま近くにいた六坂が、立ち止まって篠原さんといっしょにひろってあげたのだ。

 そこまではよかったが、篠原さんが
「あ、ありがと」
 とかなりそっけなく言っただけだった。

 あの言い方、どうなのよ、と霧恵のしゃくに障ったらしい。