「偏見って、そんな……」

 霧恵も、ちと言い過ぎたと思ったらしい。偏見って言葉は盾になるんだね。勉強になる。
 が、ヨモギはチラシの入ったクリアファイルを机にしまった。

「なんつーか、バレンタインにチョコもらえるかと思ったら、上から泥水かけられたような気分だな」

 なにその例え。うーん、ヨモギもちょっと調子に乗ってないか?


 篠原さんが、耳にイヤホンを差してなにかを聞いていた。

 これだって厳密にいうと校則違反だろう。

 この高校ってほんっと自由だね。あたしの将来大丈夫か。


――


「ハックルベリーのミッドナイトレイディオー!」

 男性が二人、テンション高めな声で、タイトルコールが聞こえてきた。

 音楽が流れてくる。

田中「さー始まりました。今夜は、いつも聞いてくださってる方と違って、新規のリスナーの方も聞いてるんじゃないですかね? こんばんわー。ハックルベリーの色恋担当、田中です」

松原「色恋担当? いつからそうなったの?」

田中「いまでしょ」

松原「某予備校の先生のそれ、入れなくていいから。古いし。えー、ハックルベリーのツッコミ担当、松原達也です」