放課後ラプソディ

「これ、なに書いていていいかわかんなかったよね」

 霧恵の言うとおりで、あたしもこの円になにを書いたらいいのかわからなかった。しかも、これを人に見られると考えると、うかつなことは書けない。これが原因で変なあだ名つけられた、なんて嫌だ。自己紹介は、最初が肝心だ。

「先生に、これ壁に貼るように頼まれたんだけど、手伝ってもらえないかなぁ」

「ああ、いいよ」

 霧恵が教卓のなかからセロハンテープを出した。

 あたしと霧恵がみんなのアンケートをセロハンテープで壁に貼っていると、なにも言わずに六坂も手伝い始めた。

 壁に貼る前に、六坂が手を止めた。

「ちょっとこれすごいな」

 アンケートを見ている。

 私も横から見ると、それは芹沢ので、円グラフには
「特になし」
 とだけ、走り書きのような雑な字で書かれていた。別にこれ以外思い浮かびませんでしたけど、と文字が静かに主張している。

 なにがあったか知らないが、芹沢にはあまりかかわりたくないと思った。