放課後ラプソディ

 左眼の下の筋肉が引きつった。それって、銀色の指輪みたいなのがいくつもつながっていて、手の指にはめて、パンチする武器だ。

 なんでそんなものを。

「あいつちょっと……、ヤバいよな」

「うん……」

 なんだっけ、映画のタイトルにもなった。……あ、思いだした。

「少年メリケンサックだね」

「そうだな。でもそれおもしろくない」

「別にウケ狙いじゃないよ、いまのは」

 六坂とあたしの芹沢へのイメージが「ヤバい人」で一致した。

 うちの高校は、かなり自由だ。持ち物検査というものがない。

 でも、だからって、武器を持ってくるなよ。誰彼かまわず襲撃したくてしょうがない、とか?

「あー面倒くさい」

 そう言いながら、霧恵が教室に入ってきた。手に、紙の束を持っている。

 これ、この前のアンケートだ。先生がクラスメートのことを早くわかるようにと、プロフィールを書かされた。

 アンケートの真ん中には円があって、そこに興味のあるものや好きなものなどを円グラフで書いた。