強い――とは思っていた。でも、まさかこれほどまでとは思わなかった。見とれているアイラの左側からフェランが切りかかってくる。

「な、何するんですか!」
「ぼやぼやしない! 君は君の練習があるんだからね!」
「ちょっと! 乱暴はよしてくださいよっ」

 ちゃらちゃらした外見とは裏腹に、フェランの稽古は容赦ない。

 その日の稽古が終わる頃には、アイラはぼろぼろになっていた。

「ねぇねぇ、今度の非番、一緒に出かけようよ」
「こんだけ殴ってくる相手と一緒に出かけるほど物好きじゃーないですよ、フェラン様」
「ん? でもそれって稽古の時だけの話じゃん? 稽古離れたら、俺優しいよ?」
「……仕事に戻ります」

 少し離れたところでエリーシャが手を振っている。アイラはフェランが誘いを重ねるのは無視して、エリーシャのところへと駆け戻った。