エリーシャはダーシーに握られた手に視線を落とし、それを振り払う。

「どうして、クリスティアン本人だってわかるのよ? セシリーによって操られてるって、そういうことだってあるのでしょう?」

「エリーシャ様――事実は変えられません。わたしは、クリスティアン・ルイズ本人と対峙し、その魂を確認いたしました――魂と肉体は完全に一致しておりました。ユージェニー・コルスも同じ証言をすることでしょう」

「……だからって、だって……。何で? 何でダーレーンにいるのよ!」

 ダーシーが制止するのもきかずに、エリーシャは扉に走り寄った。ばたんと激しい音を立てて扉が閉じられる。
 
 それを一瞬ぼうっとして見送ったアイラだったけれど、本能が命じるままにエリーシャの後を追った。

「エリーシャ様!」

 アイラのかけた声にはかまわず、黄金の髪の持ち主は皇女宮の角を曲がり、使われていない部屋に飛び込む。
 
 その扉の前に立ったけれど、開くことはためらわれた。