「死者に関する魔術には三つあります、エリーシャ様」

 ベリンダはエリーシャに向かって指を折りながら説明してみせる。

「死者を術者の自在に操る――この場合、死者は魂を持たず術者の操り人形となる。複雑な命令をこなすことはできない」

 アイラはエリーシャとともに別荘を訪れた時のことを思い出した。あの時、ユージェニーが率いていた腐った兵士。あれはユージェニーの術によって操られた死体だったのだろう。

「二つ目。死者に術者の魂を乗り移らせる。この場合は術者が死体を思う通りにすることができる――乗り移った死体が破壊されれば術者は本来の肉体に戻る。術を行使している最中に、術者の本物の肉体が滅べば術者は死ぬ」

 アイラは父の研究所の中にあった書物を思い起こした。そんなタイトルの本があったような気がする。

「三つ目。死者の魂を呼び戻し、蘇らせる――これが一番難しい。蘇らせようとしている対象が魔術師ならいくらか成功の可能性は高くなるが。ジェンセンやユージェニーでもどうだろうね」

「ベリンダ――あなたには無理?」

 エリーシャに問われ、ベリンダは首を縦に振った。