「父さん、これって……」

「ものすごーく痛いぞ……これは、クリスティアン・ルイズと名乗る男にやられたもの」

 ジェンセンは皆の目から隠すように、ローブの袖を元に戻した。それから呼吸を整え、落ち着きを取り戻してから話し始める。

「多かれ少なかれ、タラゴナ帝国皇室の血を引いている者は、魔術師たる資質を持ち合わせている――本職になるには物足りない人が多いがね」

 珍しく俯いていたエリーシャが顔を上げた。

「クリスティアンは、皇室の血筋の中でも魔力を強く持っていた。それはわたしも知ってる」

「クリスティアン様は――そう、真面目に修行なさっていたら中級――あるいは上級魔術師になれたかもしれない」

 魔術師はおおまかに魔術師、中級魔術師、上級魔術師の三階級に分かれている。ベリンダもジェンセンも上級魔術師であるが、二人の能力の差は歴然としている。
 
 ジェンセンは「最高魔術師」と呼ばれることもあるが、それは上級魔術師の中でもトップクラスの能力の持ち主、ということでしかない。