「今、この部屋の中にいる者たち以外は、全員焼いてくれ――お前に触れた者、全員だ。人間以外は焼くな。壁も、家具も焼いてはいかん」
「かしこまりました、ご主人様」

 リエンナ、と呼ばれた女は恭しい仕草で頭を垂れる。

「おい、ちょっと待て!」

 ライナスが壁際から焦った声を上げた。

「全員焼いたら困るだろうが!」
「問題ない」

 けろりとした顔で、ジェンセンは言う。

「リエンナの姿を見れば、まともな思考回路を持った人間なら近づかないさ。わかるだろ、近づけば焼かれる。そんなこと気にしないのは操られた死体だけだ、ということは焼いちまって問題ない」

 ライナスは黙り込んだ。ジェンセンは再び杖を構える。

「それじゃ、扉をぶっとばすぞ!」

 次の瞬間には、ぼん、と勢いよく扉が吹っ飛ぶ。そこから中に入り込もうとした動く死体が炎に焼かれて動きをとめた。

 動きがとまるのを確認する前に、リエンナは階段を上っていく。彼女は歩くのではなく、空中を優雅な動きで滑っていた。