扉の外からは、扉に開けられた穴を塞ぐ障害物を破壊しようとしている音がしている。

「お前ら全員壁際に寄れ。道を作る――が、その前に階段塞いでいるやつらをどうにかしなきゃならん」

 アイラはパリィを抱え上げているライナスと一緒になって壁際に寄る。父が何をするのか見守っているつもりだった。

 全員が壁際に寄ったのを確認したジェンセンは、手にしていた杖を掲げる。低い声で呪文を唱えた。

「麗しき炎の精霊、リエンナよ。契約者ジェンセン・ヨークの名において命じる――いでよ!」

 部屋の中を、熱風が吹き抜ける。アイラは思わず目を閉じた。目を見開いた時には、部屋の中は明るさを増していた。ジェンセンの前に美しい女が立っている。
 
 彼女の着ている衣と真っ赤な髪は揺らめく炎だった。精霊は契約者の趣味を反映した外見を取るから、巨乳の豊満美女なのはジェンセンの好みだ、確実に。

 彼女の全身を包んでいる炎の光で部屋の中の光景はゆらゆらと揺らめいて見え、先ほどまでとは完全に姿を変えている。

「リエンナ。頼む――そこの扉を開くから」

 ジェンセンは、家具で塞がれた扉を杖で示した。