「わたしのことはお姉さまと呼べ」
「……努力します」

「わたしとお前はタラゴナ帝国内で商売をしている長女と三女。ダーレーンに嫁いだ次女をたずねていくところだ。いいな?」

「何を商っているんです?」

「……貴重な古書だ。それで、あちこち探って歩いてもさほど怪しまれないですむだろう」

 にっとイヴェリンは唇の端を持ち上げた。

「まあ、そんなわけで長剣は持ち歩けない。貴重品は服の内側にでも入れておけ。短剣はブーツの中に隠すんだ」
「わかりました」

 アイラは素直にイヴェリンの言葉に従った。

「それではすぐに出立するぞ。いいな?」
「大丈夫です」

 旅の荷物は最低限にして持ってきた。路銀はエリーシャの手からイヴェリンに渡されているはずだ。

「まずはセシリー教団について調べる。教団に潜入したまま戻ってこないパリィとかいう密偵を探しだそう。そいつと連絡がつけば、あとはそいつにまかせることができる。ところで、アイラ」