その時、エリーシャが何かにつまずいたかのように地面に派手に倒れ込んだ。

「いたぁいっ!」

 素のエリーシャを知っている者ならまじまじと二度見してしまうような、エリーシャらしからぬ可愛らしい悲鳴があがる。

「大丈夫ですか、エリーシャ様!」

 慌ててダーシーが手をさしのべた。

「左の足首を痛めたみたい……そこまで手を貸してくださる?」

 エリーシャが刺したのは、噴水の側に置かれているベンチだった。

「当然ですとも!」

 ダーシーは素早くエリーシャの膝裏に腕を差し込む。軽々とエリーシャを抱き上げると、そのベンチへと運んだ。

 その後には、エリーシャが履いていた踵の高い靴が残されている。アイラは慌ててそれを拾い上げると、ベンチに運ばれたエリーシャの方へと向かう。

「エリーシャ様! お履き物を!」
「それより、足首が心配です。侍医を呼びますから、このままこちらでお待ちを」
「いえ、たいしたことはなさそうよ。ゆっくりなら歩けそう……靴を履かせてくださる?」