今回はさらにもともと似ている顔立ちを瓜二つというところまで似せるようにされている上に、容易には解除されないように強化されている。

「隠しても無駄ですよ。以前からあなたに魔術がかけられているのを気づいていないほどわたしは鈍くありません――皇女殿下なら当然でしょう?」

 アイラは目をぱちぱちとさせた。

「以前にあなたにかけられていたのは、ジェンセンの手によるものだった。おそらく宮廷を去る前に施したのでしょう」

 ――この男、意外に鋭い? アイラの頭の中に警鐘が鳴り響く。不機嫌になった時のエリーシャの表情を真似かけ――慌ててうつむいて表情を隠す。エリーシャは対外的には楚々とした立ち居振る舞いなのだった。

「からかってはいけませんな、皇女様。わたしとて初級魔術をおさめていることくらいご存じでしょう? ジェンセン以外の痕跡を感じるのですが?」

 魔術を使えば、そこに必ずかけた者の痕跡が残る。だから、術をかけた者と解読するものが以前に顔を合わせたことがあれば、誰がかけた魔術なのかすぐにわかる。

 さらに詳しくその痕跡を読み解けば、どんな術がかけられているのか判断することもできる。

 上級の魔術師ともなれば、痕跡を解読することによりその術をかけた者がどこの派閥に属するのか――というところまで読みとれる者もいるという。