「初級魔術師あたりなら、おいしいお魚料理のレシピ集にしか見えないはず。それをあの子はさらっと『死者操術』と読んだ」

「ジェンセンが教育したんじゃないの?」

「あの子に聞いたら、そういう教育はいっさい受けていないんだって。じゃあ、ジェンセンが読めるように魔術でもかけたのかと彼女にかけられた魔術の痕跡をたどってみてもいっさいない。本人に聞いても覚えはないって――実験台にはさんざんさせられたらしいけど、その時の痕跡も残ってないから……」

「それは、おかしいねぇ?」

 カーラも不思議そうに首をひねる。

「まあ、一つだけ考えられるとすれば――こっちの仕掛けに何かある、かなぁ。娘が読めるようにしておけば、整理とか頼めるものね」

 ベリンダは手にした本を見つめた。この本には、ジェンセンの手によって読むことを許可された者には魔力が通じないよう仕掛けが施されている。エリーシャが読むことができたのはそのためだ。

 魔術師二人は顔を見合わせたが、結局、仕掛けの謎についてまではわからなかった。