アイラが目を覚ました時、側にいたのはエリーシャだった。

「……よかった!」

 布団の上に出ていた手をぎゅうぎゅうと握りしめられる。ぼうっとした頭で周囲を見回すと、そこが滞在していた皇帝家の別荘であることがわかった。

 エリーシャが使っていた寝室ではないが、同じように心地いい寝具が身体を包んでいる。

「……何が……?」

 何があったのかは思い出せ――いや、アイラは皇女の手を振り払って布団の中に潜り込む。

 昨夜相手にしたのは、確かに兵士だった――けれど、腐乱していて異臭を放っていた。あんなものがこの世に存在するはずはない。

「……アイラ」

 皇女の前で無礼だった。慌ててアイラはかぶったばかりの布団を引きはがして顔を外に出した。

「……ありがとう」

 思いがけず、礼を言われた。アイラとエリーシャの入れ替わりは完璧で、彼女たちの方は無事に逃げ延びることができたらしい。