そのあと楽しい雑談をしてジュースが半分になった頃、紗香がカバンからスマホを取り出した。


「あれ、なんか電話が入ってる。ごめん。ちょっとかけ直してきていい?」

「うん。どうぞ」

紗香はそう言って席を一旦離れた。


こうやってテラスから通りすぎる人たちを見るとカップルばっかり。暑いのに腕を組んだり、手を繋いだり。

今世界が終わるわけじゃないし、そんなにくっついていたいものなの?それとも彼氏彼女ができると暑さを感じない体質にでもなるんだろうか。


「あれ?すずちゃん?」

そんなバカなことを考えていると、だれかに声をかけられた。


「偶然だね。すずちゃんも買い物?」

それは爽やかな顔をした圭吾くんだった。


「ひとり?」

「え?ううん。今友達はちょっと席を外してて」

圭吾くんはTシャツにデニムとラフな格好だったけど、やっぱり様になってるっていうか、背が高いからなんでも着こなせそう。


「そっか。なに飲んでるの?」

「夏みかんジュース」

「さっぱりしてそうでいいね。少し俺も同じ席に交ざっていい?」

「え、う、うん。たぶん大丈夫」

私が許可すると圭吾くんは隣の席に座った。


……紗香が戻ってきたらビックリするだろうな。

むしろ紗香は「このあと一緒に買い物でも」なんて言い出しそうで怖い。だってわざわざ圭吾くんの泳ぎを水泳部に見に行ったぐらいだし。