「みんな須賀に会いにいっちゃったね」

私と紗香は会場近くのコンビニで冷やし中華とおにぎりを買って、観客席で食べていた。

暑さもずっとこの場所にいるとなんだか慣れてきた。


「紗香も行ってきたらよかったのに」

「私は須賀のファンじゃないならなあ」

競泳ファンと言っていただけあって、自由形以外の競技も紗香は夢中になって見ていた。


「これで標準記録越えした上位何人かが全国大会に行けるんでしょ?全国とか口にだしただけでヤバいね」


そうかな。

全国の次は世界があるよ。

水泳はそのぐらい世界共通のスポーツで、頂点を目指して水の中で生きている人たちがたくさんいる。

目先の目標で終わるか、大きな目標を目指すのか。

世界なんて狙ってこの大会に出てる人なんていないと思うけど、野心が強い人が結果をだす。

そう考えれば須賀は野心ならだれにも負けないだろうね。


「すずって本当に水泳に興味ないよね」

「んー」


興味がないっていうか、むしろ興味があったから遠ざけたいの。

スイミングっていう子どものための泳ぎじゃなくて、競泳という舞台に立って水泳選手になる弟の姿を見たかったって思わずにはいられないだけ。

その夢を壊したのは私だから。


「でも私、須賀とすずって似てると思うんだよね」

「え、ど、どこが?」

須賀なんて、一番真逆の存在だよ。

紗香はちょっと意味深に微笑んだ。


「譲らないところ」