「あたしが思うに、ここで逃げたらまたひぐち君はぬるま湯に逆戻りなんだよ。」


「ぬるま湯?」


「そう。ずっと浸かっていられるような心地よい温度。西野くんがいて会長くんがいて、武藤くんがいて、みんなで楽しく今まで通りをしようと思えば、できない訳がないの。

でもひぐち君は、自分でそこから出ようとした。過去と向き合って、悩むことができた。」



人間誰でも、自分の都合がいいものに囲まれて、自分が楽にいられるところに居たいと望むと思う。


でもそれが本当に自分のためになるのかを考えると、そうじゃないことがほとんどだったりする。


今、楽をして。
今、楽しんで。

今、自分本位にいることは、先の自分の何になるだろう。


自分が楽に楽しくやっていける世界は、つまり不都合なことから目を背けて得られるもの。


「ここで諦めたら、また戻っちゃうよ?なら今、がんばろう?」