関わらなければこんな思いをせずに済んだ、だけど。

関わっていなければ、こんな風に幸せを感じることは出来なかった。

きっと、幸と不幸は紙一重なんだ。



「肝が据わってるんだね」



不意に隣のベッドから声が掛けられ、顔を上げる。

すると、仕切るカーテンを捲り、私と同い年くらいの女の子が顔を覗かせていた。

その手には、イヤホンが握られている。



「え……と」

「あぁ、いきなりごめんね?会話が聞こえちゃったもんだから、つい」



って言っても音楽聴いてたから“入院しない”ってとこしか聞こえなかったんだけどね。
と続けて彼女。

どうやら、余命云々のくだりは聞こえていなかったらしい。



「あ、いや……大丈夫ですけど……」



こんな風に同じ病室の人に話しかけられたことあんまりなかったから、新鮮に感じる。

彼女はまるで太陽のような笑顔を浮かべ、長いポニーテールを揺らしていた。



「貴方、名前は?」