名良橋君がここまで“存在”に拘るのは、やっぱり梨央さんのことがあったからかな。

そう思うと、胸がチクリと痛んだ。



「顔上げろよ」

「やだ」

「なんで」



だって、顔上げたらわかっちゃうじゃん。

唇を噛んで、涙がこぼれないよう必死になってること。

名良橋君が、そうやって未来の約束をしてくれようとするのは嬉しい。

だけど、駄目だよ。

頷けない――そう思うのに。



「……約束して」

「え……?」

「私を乗せるまで、誰も後ろに乗せないって……約束して!」



名良橋君、ごめんね。

自分のために、果たされるはずのない約束を懇願した。

傷つくのは、名良橋君の方なのに。



「……わかった。ちゃんと、約束守るから。だから……絶対な」