16歳の天使~最後の瞬間まで、キミと~

「うん」

「じゃあ飯とかない?」



頷いた私の頭を、名良橋君の手が掻いた。

そして立ち上がり、玄関へと歩いていく。



「ちょっ、名良橋君。どこ行くの?」

「スーパー。粥の材料買ってくる」

「え、そんなの悪――」

「早坂」



悪いと言おうとしたのに、それは名良橋君の私を呼ぶ声に遮られてしまった。

そして、名良橋君は大人びた顔で笑う。



「病人なんだから、遠慮すんな」



それだけを言って、アパートを出て行ってしまった。

何、今の顔……。

まるで、大切なものを見るかのような。

そしてまた暴れ始める心臓に、私は戸惑いを隠せなかった。