16歳の天使~最後の瞬間まで、キミと~

そして。



「きゃあっ!」



あろうことか、名良橋君は私を軽々と抱き上げた。

それも、前にお姫様がつく抱き方で。



「ちょ、やだ下ろして恥ずかしい!」

「うるせ。足取りが酔っ払いみたいになってんの知ってんだぞ」

「でもっ」

「これ以上騒いだら口塞ぐぞ、口で」



いきなりとんでもないことを言われ、私の思考は停止する。

その間に、名良橋君はアパートを目指して歩く。

漸く下ろされたのは、玄関の中だった。



「今更だけど俺、入っていいのか」

「何言ってんの、今更」



クスクスと笑った私を、名良橋君は再び抱き上げた。

逆らっても意味がないことをもう知っているので、何も言わない。