病気が見つかる前の家族を思い出すと、胸が締め付けられて。

その経緯を言葉にすることが、どうしても出来なかった。



「……くるし……ケホッ」



熱が上昇していくのを感じ、私は財布と診察券を持って家を出た。

こんなとき、実家だったら、と考えても仕方のないことを思う。

実家だったら……お父さんが私を車で病院に連れて行ってくれて、お母さんが看病をしてくれる。

お姉ちゃんは、そうだな……熱が出て不安に思う私を知っているから、ずっと傍にいてくれるだろう。

出来るのなら、戻りたい。

真っ白な、だけど色鮮やかな日々に。

――なんて。

私が願うことはいつも、叶わないものばかりだ。





診察を終えて、家に帰る。

その足取りは行きよりも重い。