16歳の天使~最後の瞬間まで、キミと~

不思議そうな顔をした伊東君にそれ以上は何も言わず、私は目線を落としたのだった。





「お待たせ」



練習が終わり、客席に名良橋君と高野君がやって来た。

その額には汗が浮かんでいて、今までの練習のきつさが窺える。



「んじゃ、行くか」

「そうだね」



と、歩き始めたところで高野君の様子がおかしいことに気付く。



「高野君……もしかして、足痛めた?」

「え?」



その言葉に、みんなが高野君を振り向く。

高野君は驚いた様子で私を見てから、笑った。



「参ったな、気付かれるとは」



高野君は降参、と言うように両手を上げ、小さく笑った。

やっぱり、そう思い私は鞄の中を確認しようとするが途中で止めた。