16歳の天使~最後の瞬間まで、キミと~

ちらりと横目に名良橋君を見ると、顔を背けて不機嫌そうに唇を尖らせている。

もしかしてこれ、拗ねてる……?

思わず笑ってしまいそうになるのを堪え、小さく頷く。

そして頷いてから――しまった、と思った。



「待ってるって、どこで待つの?」

「んー、いつもは講堂の客席かなぁ。ほら、うちの学校って二階部分客席になってて、出入り自由じゃん?」



あぁ、やっぱりそうか。

心の中で静かに落胆する。

講堂の中で待つ、それは即ち練習を見るということで。



「んじゃあ行こう、早坂さん」



高鴫さんのその声に、私はすぐに反応することが出来なかった。





重い足取り講堂の客席に座り、講堂を見下ろすとそこに名良橋君の姿を見つけた。