「なんで、いきなり……?」



言ってから、しまったと思う。

言いたくないことかもしれないじゃん、と反省していると、名良橋君はどこか遠くを見つめてぽつりと呟いた。



「……似てたんだよ、俺の幼なじみに」

「……幼なじみ?」

「そう。梨央って言うんだけど。一年前の冬、いきなりその一家が夜逃げした」



予想外の言葉に、今度は私が目を剥く。

予想以上にヘビーな話だな……。

次に来る言葉に動揺してしまわないよう、再び手を動かす。



「梨央の親父が、借金抱えたらしくて。前日までは隣にいたのに、気が付けばいなくなってた」



私って、つくづく馬鹿だと思う。

名良橋君は過去形で話すのに、その声は何かを悔いているように感じ、涙が溢れそうになるなんて。