矢継ぎ早に言葉を繰り出す名良橋君を無視して部屋に入ろうと鍵を取り出すと、最早当たり前のように私の隣に並ぶ名良橋君。



「……ちょっと、何」

「厳しいご両親をお目にかかろうと思って」

「……不法侵入で訴えてもよろしいならどうぞ、両親留守ですが」



ここに居るはずもない両親に会わせられる筈もなく、私はその場しのぎの嘘を吐いた。

すると名良橋君は私に視線を向け、少し考える素振りを見せる。

いい予感、しない。

逃げるように鍵穴に鍵を挿すと、名良橋君を無視して家の中に入ることを試みた。

が、勿論巧くいく筈もなく。



「何勝手に入ろうとしてんの」



扉の隙間に足を挟んだ名良橋君が、無表情のまま私の目を見据えた。