「……」



はいはいで俺の元まで来た息子に応えることも出来ずに、俺は手元にある封筒を見つめた。

心なしか、指先が震えている気がする。

そんな手で、恐る恐る封筒から便箋を取り出して開くと、封筒同様、早坂の字が目に飛び込んできた。



16年前の今日は、土砂降りの雨だった。

部活を終え、雨に濡れながら松葉杖で病室へと向かうと、早坂が衰弱しきった状態で俺を出迎えて。

今にも消え入りそうな声で、「16歳になれたよ」って言ったんだ。

そしてその数時間後、早坂は息を引き取った。



そんな早坂が遺した手紙は、【未来の名良橋君へ】と言う言葉で始まっていた。



【未来の名良橋君へ。

この手紙を見てる名良橋君は、何歳なのかな。

全く検討もつきません。