苦しくも愛しい季節が、今年もまたやってきた。





「あれから、もう16年になるんだな」



ネクタイを緩めてそう呟いた高野を前に、「そうだな」と相槌を打つ。

今日、6月28日は早坂の誕生日であり――命日だ。



「もう早坂の倍生きてんだもんなぁ、俺等」

「ほんと、月日の流れは怖いよ」

「だな」



残っていたコーヒーを飲み干すと、高野がそう言えば、と何かを思い出したように内ポケットに手を入れた。

そして、取り出した淡いピンクの封筒を俺に差し出す。



「何これ」

「早坂さんからの手紙」

「……は?」



状況が巧く飲み込めずにいると、高野は身を乗り出して封筒を俺に押し付けた。