「……馬鹿」



名良橋君はそう呟いて、抱き締める腕に力を込めた。



「んなの、当たり前だろ。頼まれなくてもいてやるっつーの……」

「……ありがと」

「俺からの我が儘も、聞いてくれるか?」



名良橋君は私から体を離し、私を見据えた。

こうして見つめられると、逃れられなくなる。

だけどそれは、嫌じゃない。

うん、と呟くと、目に大粒の涙を溜めた名良橋君はくしゃりと笑って。



「……ずっと、傍にいてくれるか?」



なんて言ったから、泣きながらだけど、笑っちゃった。

小さく頷くと、名良橋君は私を再び抱き締めた。



ずっと傍にいるよ。

私が、いなくなっても。

姿形は見えなくても。

ずっとずっと、名良橋君の傍にいるから。