約束の日、私は診察室で険しい面持ちの先生と向き合っていた。



「本当に行くの?」

「……はい。今日行かなかったら、私絶対後悔するから」



立ち上がり、先生に頭を下げてから診察室を後にする。

同じ病院内の名良橋君の病室に向かう足取りは、これ程にないくらい重かった。



今日は朝から何となく体調が悪くて、約束の時間の前に診察を受けた私。

私と名良橋君が出掛けることを知っていた先生は、強く引き留めないでいてくれて。

裏を返せば、私にはもう殆ど時間が残されていないということだ。



「名良橋君、由羽ちゃん、おはよ!」



極力明るい声を出してカーテンを開けるも、そこには名良橋君の姿しかなく。

あ、あれ?

予定通りなら、由羽ちゃんもいる筈なのに……。